時は水田除草剤の3割を占める農薬でした。
昨年前、新潟県の胆のうガン患者が全国平均の2倍も多いことが指摘されました。
新潟大学医学部の山本正治教授のグループが疫学調査をおこなった結果、胆のうガンの多発地帯とCNPを大量に散布し、水道水からも検出される地域に相関関係があることが93年1月に発表されました。
この報告を受けて厚生省の残留農薬安全性評価委員会が検討した結果、日本ではじめてADI(1日摂取許容量)の設定が取り消されたのです。
時は水田除草剤の3割を占める農薬でした。
昨年前、新潟県の胆のうガン患者が全国平均の2倍も多いことが指摘されました。
新潟大学医学部の山本正治教授のグループが疫学調査をおこなった結果、胆のうガンの多発地帯とCNPを大量に散布し、水道水からも検出される地域に相関関係があることが93年1月に発表されました。
この報告を受けて厚生省の残留農薬安全性評価委員会が検討した結果、日本ではじめてADI(1日摂取許容量)の設定が取り消されたのです。
CNPは65年、3井東圧化学が開発、30年間にわたって使われてきました。
昨年の農薬取締法の改正で、慢性毒性・発ガン性試験のデータの提出が農薬メーカーに義務づけられて以降も3年ごとの農薬の再登録にパスし、「安全だ」とされてきた農薬でした。
じつは、77年、厚生省はCNPについてADI(1日摂取許容量)を設定したものの、安
全性試験のデータが、専門委員会で問題にされ、追加試験が求められました。
その後メーカーが提出したデータはいずれも専門家を納得させるものでなく、4度もデータの再提出が求められました。
しかし、この間、17年間にわたりCNPは製造・販売・使用し続けられました。
94年3月、厚生省は水田除草剤CNPについて「胆のうガンとの因果関係は明確ではないが、ガン死亡率との相関関係は認められる」と発表しました。
そして、CNPのADI(1日摂取許容量)の設定を取り消しました。
ADI(1日摂取許容量)は、毎日摂取し続けてもそれ以下の量であれば健康上、問題にならないとされている量で、クロルニトロフェンの場合、1日あたり体重1キログラムにつき、0・00204ミリグラムが設定されていました。
厚生省の設定取り消しを受けて、農水省はCNPの使用自粛を通知、メーカーの3井東圧化学も製造・販売を自粛したうえ製品を回収することになりました。
政府、製造企業、研究者が危険を知っていながら、化学物質の安全性データを隠したり使用禁止の措置を採らなかった結果、多くの国民が死に追いやられる。
こんなことは絶対あってはならないことです。
ところがHIV(薬害エイズ)事件は、国家による殺人さえまかり通るとい
う日本の政治の遅れ、官僚のモラルの低さ、企業の非人間性をまざまざと示しています。
農薬の問題でもこれによく似た事件があります。
除草剤クロルニトロフェン(CNP)事件です。
この違いは次のような統計の取り方の違いが原因となっています。
たとえば、農産物10品目についてそれぞれ10農薬の検査をしたとき、1品目から1農薬が検出された場合、厚生省の検出率は、調査農薬延べ100件に対して1件検出として、検出率1%としています。
東京都の場合は、10品目中1品目からの検出で検出率10%としています。
この集計方法の違いによって検出率に大きな違いがでています。
厚生省の検出率の数え方では、検出されそうにない農薬をたくさん検査すれば検出率は下がることになります。
農薬の検出される農産物の割合をあらわす東京都の検出率のあらわしかたの方が適切でしょう。
この点からみると、厚生省が主張する「わが国で流通している農産物における農薬の残留レベルは低い」(厚生省生活衛生局食品化学課編「食品中の残留農薬」)との見方は問題があります。
ところで厚生省は96年9月「食品中の残留農薬」と題する冊子を発行し、厚生省、地方自治体などが94年度におこなった調査結果を初めて公開しました。
これによれば、農薬の検出率は輸入品で検査農薬数の0・95%、国産品で0・60%になっており、輸入品の方が国産品より1・5倍、農薬の検出率が高いという結果がでています。
ところが、東京都食品監視指導センターの94年度の輸入農産物の調査結果では、農薬の検出率は20・0%と報告されており、厚生省の調査結果とはケタが違います。
さまざまな分野で輸入農産物や食品に多くの問題があることが明らかになっていますが、それでは、国内産はどうでしょうか。
輸入農産物とともに国内産の検査をおこなっている東京都食品検査センターの調査結果をみてみましょう。
この調査によれば、93年度の農薬検出率は36・1%、94年度の検出率は20・0%と報告しています。
このうち、くん蒸に使用される臭素化合物のみを検出した品目を除くと、検出率は93年度で14・5%、94年度で11・5%です。
この数字だけを見れば、輸入農産物の残留農薬検査の結果とあまり変わらないといえます。
少しくわしく東京都食品検査センターの調査結果をみてみましょう。
国内産の食品に関する94年度の検査結果は以下のような特徴を持っています。
①やはり、輸入農産物の残留農薬は高い
検査対象の食品は90種類、581品目、検査対象農薬は104種類で、農薬が検出された農産物は46種類、116品目(20%)、検出した農薬は1=種類と報告されています。
昨年度の輸入農産物からの農薬検出率は26%ですが、検査対象農薬が67種類と国内産よりずっと少ないことを考えると、やはり輸入農産物の汚染レベルの方が高いと考えられます。
②ポストハーベスト農薬は輸入農産物よりずっと少ない
検出された21農薬のうちポストハーベスト農薬は4種類(19%)であり、輸入農産物の場合(56%)とくらべずっと少ないといえます。
③基準値をこえた6つの農薬
食品衛生法による残留農薬基準をこえたのは、登録保留基準をこえたのはのとおりです。
この調査結果をみると、農薬使用量でずばぬけている日本の農産物の安全性問題をもっと考えないといけないと思います。
④食品衛生法の基準のない農薬が3分の1
検出農薬2一種類のうち、食品衛生法による残留基準がない農薬が7種類と3分の1もあります。
輸入農産物の場合も検出16農薬のうち、基準のないものが6農薬、37・5%ですから、国産、輸入品ともに検出農薬のおよそ3分の1が、食品衛生法に基準のない残留農薬ということになります。
⑤特殊毒性のある農薬が9種類あつた
発ガン性、催奇形性など特殊毒性のある農薬が9種類も検出されています。
クロロタロニル、EPN、ジクロルボス、ジメトエート、フェニトロチオン、チオジカルブ、メソミル、オキサジアゾン、クロルベンジレートです。
このうち発ガン性のある農薬は、クロロタロニル、ジクロルボス、チオジカルブ、メソミル、オキサジアゾン、クロルベンジレートの6種類です。
⑥国産品の安全性も直視を
調査結果をみる限りでは、国産品の場合も農薬汚染が深刻です。
この現実を直視する必要があります。
農作業の労力を省くため殺虫剤、除草剤、殺菌剤など農薬に頼る現在の農業のあり方を変えることが大きな課題であることを、調査結果は示していると思います。
そのためには農業で食える農業政策への転換が、農薬依存型農業からの脱却のカギを握ることを考えなくてはならないと思います。
食物連鎖を考えれば、人が肉や卵、牛乳や乳製品を食べることで農薬を摂取する危険があります。
飼料の場合、残留農薬基準といっても指導基準であり、罰則もありません。
検査結果がほとんど公表されていないことも問題です。
また96年には、アメリカのトウモロコシの不作と売り惜しみで価格が急騰し、日本の酪農業などが大きな影響を受けました。
こんな事態を避けるためにも、飼料用の稲をつくるなど、飼料自給率の向上が求められています。
コメの減反などもってのほかです。
いずれにせよ、食を輸入に頼る農業破壊は、家畜用の飼料の安全や安定供給でも、のっぴきならないところにきており、政府の政策の根本的な転換が迫られています。
輸入飼料の安全性はどうなっているのでしょう。
長い間、輸入飼料には残留農薬の基準がありませんでした。
昨年、オーストラリア産の輸入牛肉からDDTやディルドリンなどの農薬が、タイ産のブロイラーからはDDTが検出されました。
いずれも、現地の飼料に残留した農薬が生物濃縮されたためでした。
また、アメリカでは、トウモロコシからカビ毒アフラトキシンが検出される事件が起こりました。
このような事態を迎えるなか、農水省は家畜飼料の有害物質基準を初めて設定しました(88年)。
現在、家畜飼料には、12種類の残留農薬指導基準がありますが、その残留基準は、人間が食べる食品の残留農薬にくらべると、一部をのぞいてゆるくなっています。
現在、わが国ではBHC、ヘプタクロル、ディルドリン、エンドリン、EDBなど毒性が強い農薬は使用が禁止されており、食品からの検出はまったく認められていません。
しかし、家畜飼料の場合は残留農薬指導基準以下ならよいとされています。
わが国の家畜の飼料がどのような状態になっているか調べてみましょう。
飼料には牧草などの粗飼料と、トウモロコシやコウリャンなど穀類からなる濃厚飼料があります。
驚いたのは、飼料の自給率です。
昨年代の終わり頃から自給率は30%を割っています。
飼料の消費量の第1位はトウモロコシで、1279万1000トンですが、ほぼ全量を輸入に頼り、その82・5%がアメリカからの輸入です(92年度)。
5%にあたる2140万トン(94年度)を輸入しています。
国内で作られた肉や卵などといっても、このように家畜の飼料の大半は輸入品なのです。
これを考えると、実際の食料自給率は発表数字よりさらに少ないといえるでしょう。
DDT、BHCという、すでにわが国では使用が禁止されて
久しい農薬ですが、その名前を聞くと、生まれながらに手や足のない子ザルが群れから離れて悲しげな目をしていた淡路島モンキーセンターの奇形ザルのことを思い出します。
モンキーセンターができて29年、その間生まれたニホンザル706頭の新生児のうち、125頭、17・7%に奇形が確認されました。
これは自然界の奇形発生率0・4%の40倍もの高率です(95年)。
死亡した奇形ザルを解剖した結果、内臓からBHC、ディルドリンなどが健常ザルの平均7・4倍もの値で検出されました。
奇形の子を産んだ母親ザルからは、ほかのメスの2倍の残留量が確認されています。
サルのエサには大豆や小麦が使われていますが、アメリカ産がほとんどです。
ところで食用のニワトリや牛などのエサも輸入飼料が圧倒的ですから、奇形ザルの警告を重く受け止めなければならないと思います。
現在、アフラトキシンは穀類、豆類などを汚染し、世界的にも問題となっています。
とくに配合飼料用に用いるピーナッツが問題だと専門家も警告しています。
日本では、市販の輸入ピーナッツバターからアフラトキシンが検出された(71年)のをきっかけに、厚生省は「検出された食品は食品衛生法に違反するものとして取り扱うこと」とする旨の通達を出しました。
アフラトキシンの汚染地域は、熱帯、亜熱帯に広がり、コメの輸出国タイ、アメリカ、中国、オーストラリアはいずれもアフラトキシンの汚染地域です。
厚生省が発表した93年度輸入食品の違反事例で、アフラトキシンが検出された国と、食品をみると、落花生の多いことがわかります。
ある化学者は、絶対にピーナッツは口にしないといいます。
毒グモ事件は記憶に新しいところですが、輸入には日本にない有毒物が入り込む危険があります。
このことはどんなに強調してもしすぎることはないでしょう。
ところで、カビといえば、戦後の食料不足の時代に、輸入されたコメがカビで汚染されていた事件(黄変米事件・おうへんまいじけん)などで知られているカビ毒などとともに、現在知られている自然界最強の発ガン物質といわれるカビ毒、アフラトキシンが心配です。
昨年、イギリスで七面鳥、アヒルのひなの大量へい死事件が発生しました。
原因を追求した結果、ブラジルから輸入した飼料用ピーナッツに付いたカビが生産したカビ毒によることが判明しました。
その毒素がアフラトキシンと命名されました。
アフラトキシンを生産するカビは10数種類あり、アフラトキシンにもB1、B2、C1など16種類あることが知られています。
アフラトキシンは肝臓に対して強力な発ガン性がありますが、270~280℃以上に加熱しないと毒性を消すことができません。
なかでも最強のアフラトキシンB1は、1グラムで4万羽のアヒルを殺すことができます。
したがって、少しでもかびの生えた穀類を家畜に与えることは避けるべきです。
飼料中に含まれたアフラトキシンなどは、家畜の乳や肝臓などから人に取り込まれることになるからです。
近来にないコメの凶作による緊急輸入米が到着し始めてまもなく、舞鶴港着の第5船のタイ米から、30トンの白いカビにおおわれたコメが発見されました。
緊急輸入米が入ってくるというので、神戸にある輸入食品の検疫センターを調査で訪れたとき、検査官が「航海中にコメにカビが生え、日本に着いたときにはアルコールになっている事態もあり得る」と心配していましたが、現実にカビの生えたコメが到着しました。
カビには、カビ毒(マイコトキシンと呼ぶ)を産生するものがあります。
それが心配で、厚生省に舞鶴着のタイ米のカビはどんな種類なのかを問い合わせたところ、担当官は「舞鶴着のカビ米は商品価値がなく廃棄するので、調べるつもりはない」との返事でした。
どんなカビなのか調べて、その後に備えるのが行政としての当然の責任であるはずです。
緊急輸入米では、その後、神戸港などに到着した中国米からもカビが検出されました。
なかには検査をくぐり抜けて、小売店で発見され、回収された例もありました。
国内では、ベビーフード用の粉末野菜に4年間も違法な照射をしていた事件が78年に発覚しましたが、放射線照射の検出が困難な点をついて悪用していたものです
食品などに放射線を照射すると、分子の鎖が切れてフリーラジカル(遊離基)を生じ、それが周囲の分子と結合して、身体に有害な物質に変わってしまうことがあります。
また、発ガン物質のアフラトキシンが増大するという研究者がいたり、特定の微生物が増大すると主張する学者もいて、消費者としてはまだ疑問が山ほどあります。
しかしWTO(世界貿易機関)体制のもとでは、こういう食品の輸入が、消費者の意志に関係なく自由化されることは、遺伝子組み換え食品の例をみても明白です。
人の健康にかかわる問題は、国民的合意を得てから進めるべきです。
そのためにも、国は放射線照射食品の問題については、将来像とその審議の過程を明確に提示し、十分な時間を取って合意づくりをすべきだと考えます。
そこで急浮上する恐れがあるのが、放射線照射で殺虫、殺(滅)菌する方法です。
食品に放射線や電子線などを照射して保存を図ったものが、放射線照射食品です。
昨年、国連の専門委員会は「いかなる食品も10キロ・グレイ(吸収線量の単位で、放射線のエネルギーが人体や物質にどれだけ吸収されたかを示す量)以下の照射は問題ない。
毒性試験をおこなう必要もない」と断定しました。
それ以来、ポストハーベスト農薬の代わりとしての利用もふくめ、世界各国で放射線照射が急速に普及しました。
わが国では、65年に原子力委員会内に食品照射専門部会を設置して研究をすすめ、ジャガイモ、タマネギ、コメ、小麦、ミカン、ソーセージ、水産練り製品の調査を終えています。
現在、ジャガイモの芽止め(発芽防止)だけが認められ、北海道士幌町で照射しています。
放射線照射食品の輸入は、食品衛生法で「原則として」禁止されています。
しかし放射線照射食品がすでに輸入され、食卓にのぼっていると主張する人もいます。
まさかとは思いますが、照射されたものかどうかの判別が困難で、実態は不明です。
91年に1件ずつ輸入で違反がありましたが、いずれも書類やラベルで判明したものです。
輸入される植物に地中海ミバエやコドリンガ(蛾)などの害虫がついていれば、輸入が禁止されます。
わが国にもいる害虫がついているなどの場合は、くん蒸すると輸入が許可されます。
この検疫くん蒸には青酸ガス、臭化メチル、リン化アルミニウムなどが使用されています。
臭化メチルは、土壌の殺菌や殺虫など、農薬として広く利用されていますが、さきほど紹介したように、1993年から94年にかけての緊急輸入米では、しばしば検出された農薬です。
臭化メチルには変異原性などの毒性があり、国民の不安をかきたてましたが、厚生
省は「基準値以下だから問題ない」という態度でした。
臭化メチルの使用例を、輸入リンゴでみてみましょう。
アメリカとニュージーランドのリンゴには、コドリンガ(蛾)と火傷病菌が付いている可能性があり、それらが日本に侵入すると、リンゴをはじめ果物が壊滅的な打撃を受けるので、これまで輸入禁止措置がとられていました。
しかし、95年1月、日本政府はアメリカの外交圧力に屈し、リンゴの輸入を解禁し、その際、農水省は告示で以下のような条件をつけました。
①園地を指定し、土壌を濃密に消毒すること。
②収穫したリンゴは、1立方メートルあたり56グラム(アメリカ)または24グラム(ニュージーランド)の臭化メチルでくん蒸すること。
③長期間低温で消毒すること(アメリカは2・2℃で55日間、ニュージーランドは0・5℃で25日間)。
このような条件を付けて、わが国のリンゴ生産者の反対を押し切って、輸入を解禁しました。
リンゴの大生産国日本へ、わざわざ太平洋を越えて競合品を売り込むため、こんな無理をしています。
サクランボも日本へ輸出する際、臭化メチルでくん蒸することが義務づけら
れています。
世界の臭化メチルの91年の使用量は約7万トンです。
位はアメリカの2万8000トン、2位は日本の9700トン、3位はイタリアの7500トンと、この3力国で65%を占めます。
じつは、臭化メチルはフロンに次ぐオゾン層破壊物質なのです。
昨年12月の国際会議で、2001年に25%削減し、2010年に全廃することが決まりましたが、アメリカは今世紀中に生産を全廃する意向で、欧州も禁止に積極的です。
検疫時の使用量がもっとも多い日本は、全廃になると農産物の輸入が困難になるとして、農水省が炭酸ガスなど他の消毒剤の開発や低温処理などを研究しています。
しかし、炭酸ガスや低温殺菌の効果はあまり期待できないようです。
さて、この小麦粉のランクのうち食用となるのは特等粉と1、2等粉ですが、学校給食用パンの原料になる小麦粉は1等粉に2等粉を混ぜたもので、これは価格が安いから使用するというのが文部省の説明です。
このように、等級の低い粉でつくられたパンほど農薬が残留している可能性が高いわけで、これが、学校給食用のパンから農薬が検出される原因ではないかと考えられます。
しかし、厚生省は「まったく問題がない数値。
ほかにも化学物質を含む食品はいくらでもあり、給食パンのわずかな殺虫剤を問題にされてもコメントのしようがない」と話しています。
子どもの健康など眼中にないかのような文部省、厚生省の姿勢は安全・安心を求める親の気持を逆なでするようなものではないでしょうか。
小麦粉の等級は、製粉業界が通称として、特等粉から1、2、3等粉、末粉(まつこ)にランク付けしています。
「小麦の中心部から外側の
能性が十分あり、下肢のマヒや運動失調などの症状を起こす独特の作用をもっているといわれています。
さらに、これらの農薬は遺伝情報を担っているDNAを損傷し、突然変異をひきおこす変異原性や、胚(はい)や胎児の発生が影響を受けて奇形が生みだされる催奇形性などの毒性が認められると報告されています。
したがって、小麦粉は中心部ほど残留農薬が少なく、外側になるほど残留量が多く、とくにフスマに多く残留します。
つまり、等級が下がるにつれ、残留農薬の量が増えることになります。
アメリカやカナダでは、わが国で禁止されているポストハーベスト農薬の使用が認可されています。
小麦のポストハーベスト農薬は、「乳剤散布・滴下・噴霧」といった方法で、長期の貯蔵、長時間の輸送の際に腐敗したり虫に食われないように小麦に殺虫剤を混ぜ込むものです。
カーギル社、コンチネンタル社、ブンゲ社など多国籍企業である巨大穀物商社(穀物メジャーと呼ぶ)は、世界各地に生産と流通のネットワークをもち、各国の国内市場を独占する(アメリカでは穀物輸出の80%以上といわれている)とともに小麦など農産物の世界貿易市場を牛耳り、生産量や穀物価格の調整にも絶大な影響力をもっています。
世界中に穀物を流通させる彼らにとって、国際相場をにらんでの長期貯蔵、大洋を越えての長距離・長時間輸送によって「商品価値」を落とさないため意図的にポストハーベスト農薬を使用しています。
厚生省や東京都消費者センターによる94年の小麦や小麦加工品の残留農薬の調査でも、農薬が検出されています。
95年、市民団体の日本子孫基金が、横浜国立大学環境科学センターに委託して学校給食用のパンを調べたところ、農薬(殺虫剤)が検出されました。
この年に限らず、ここ数年引き…続いて検出されています。
学校給食用に限らずパンは、主にアメリカ産とカナダ産の小麦を原料にしてつくられています。
小麦は年間およそ600万トン(94年)輸入されていますが、輸入小麦にどんな問題があるのでしょうか。
このように、輸入食品に残留、付着している可能性があっても、検査さえおこなわない農薬があることを示しています。
~96年度は幸いなことに3年連続の豊作です。
そして備蓄は、96年11月時点で政府基準の約2倍にあたる300万トンに達しています。
ところが、WTO協定による輸入米は95年度40万トンを皮切りに、毎年輸入量を増やし、2000年度にはわが国のコメの生産量の8%にあたる80万トンもの輸入をおこない、その後の輸入自由化に道を開こうとしています。
政府は、農民に減反を強要し、日本の農業の破壊を強行しながら、一方で農薬汚染の輸入米を増やしています。
この逆立ちした政治のあり方が大きく問われていることが、輸入米の検査結果からも浮き彫りになっているといえましょう。
厚生省が発表した、95年度ミニマム・アクセス米の残留農薬などの検査結果によれば、オーストラリア米の検査件数30件のうち29件(検出率97%)をはじめ、多くの輸入米から臭素が検出されています。
また、アメリカ米、オーストラリア米からはポストハーベスト農薬マラチオンが検出されました。
緊急輸入米の時のオーストラリア米からは検出されなかった農薬です。
緊急輸入米で中国米から検出されたイソプロチオラン、トリシクラゾールはミニマム・アクセス米では検査対象にされていません。
基準値が設定されていないからでしょうか。
93年12月、細川内閣は、コメの輸入自由化に反対するという公約や、国会での決議をふみにじり、米輸入自由化を認める決定をおこない、その後羽田内閣、村山内閣の手でコメ輸入自由化へむけてWTO協定が調印され、94年12月の国会で批准が強行されました。
その結果、95年度にミニマム・アクセス(最低輸入量)米として約40万トンが輸入されました。
輸出国はアメリカ、タイ、オーストラリア、中国、パキスタン、イタリア、ウルグアイです。
そのうち、オーストラリア米(18トン)、タイ米(4トン)、ウルグアイ米(ニトン)、アメリカ米(1トン)、計25トンが腐敗、変敗により食品衛生法第4条1号違反として取り扱われ、積み戻しまたは廃棄の措置がとられました。
厚生省は、輸入米の残留農薬は「基準値以下であり食品衛生上問題がない」としていますが、これらの農薬にはいずれも特殊毒性があります。
中国米からは、カーバメイト系殺虫剤で変異原性が認められているイソプロカルブ、殺虫剤・殺菌剤であるイソプロチオラン、イモチ病防除剤であるトリシクラゾールが検出されました。
イソプロカルブ、イソプロチオランは日本の農薬メーカーが開発した農薬です。
日本で製造された農薬が輸出され、外国で使われて残留農薬としてもどってくる、いわゆる農薬のブーメラン現象が輸入米でも起きています。
イソプロチオランとトリシクラゾールについては、残留基準が決められていません。
イソプロチオランは慢性毒性データの公表もありませんし、トリシクラゾールは劇薬に指定されています。
こうした農薬が基準さえ決められず、輸入米に残留していても規制されないのが実態なのです。
厚生省の検査結果をみるとアメリカ、オーストラリア、中国、タイからの緊急輸入米のうち87%から臭素が検出されました。
殺虫剤の臭化メチルによってくん(薫)蒸処理されていることを示しています。
厚生省は、検出濃度が基準値以下であり「食品衛生上問題がない」としました。
しかし、臭化メチルには発ガン性があることや、くん蒸の際、コメの成分との化学反応によって生成される物質の毒性はまだわかっておらず、安全とはいい切れません。
また、臭化メチルはオゾン層を破壊するため、使用禁止が国際的な課題になっている物質です。
臭化メチル以外にも、有機りん系殺虫剤であるマラチオン、フェニトロチオン、ピリミホスメチル、クロルピリホスが検出されました。
これらはいずれも、ポストハーベスト農薬として使われています。
ご存じのように通常、農薬は農作物を生育させるために、収穫するまでに殺虫、殺菌、除草などを目的として使用しますが、ポストハーベスト農薬とは農作物を収穫した後、殺虫、殺菌など、農作物の保存の目的で使用される農薬です。
93年には、コメの大凶作によって250万トンをこえる緊急輸入米が、北は小樽から南は那覇まで数十の港に荷揚げされました。
厚生省は、1船わずか1検体という少ない検査数、それに検査対象とする農薬の種類を減らすなど、さまざまな手抜きをしながらも、国民の安全性確保の要求におされて残留農薬検査をおこないました。
厚生省は、最初の数船の検査結果を発表した後、安全性は確認されたとして、以後の入港船についての検査結果の公表をやめようとしました。
国民の強い批判を浴び、結局、引き続き検査結果の公表はおこなわれましたが、当時、関係者も厚生省の担当官に検査結果を公表するよう強く求めたことを思い出します。
養殖魚も食品衛星生法によって、抗生物質や抗菌性物質が残留していてはいけないことになっていますので、出荷前何日間は、使用禁止という手引き書が必要になるのです。
これまで、輸入養殖魚(エビ、ウナギ)から抗生物質などが検出されて問題になったことがありましたが、人体への影響など本格的な研究が待たれています。