くん蒸と放射線照射(残留農薬検査)

輸入される植物に地中海ミバエやコドリンガ(蛾)などの害虫がついていれば、輸入が禁止されます。

わが国にもいる害虫がついているなどの場合は、くん蒸すると輸入が許可されます。
この検疫くん蒸には青酸ガス、臭化メチル、リン化アルミニウムなどが使用されています。

臭化メチルは、土壌の殺菌や殺虫など、農薬として広く利用されていますが、さきほど紹介したように、1993年から94年にかけての緊急輸入米では、しばしば検出された農薬です。

臭化メチルには変異原性などの毒性があり、国民の不安をかきたてましたが、厚生

省は「基準値以下だから問題ない」という態度でした。

臭化メチルの使用例を、輸入リンゴでみてみましょう。

アメリカとニュージーランドのリンゴには、コドリンガ(蛾)と火傷病菌が付いている可能性があり、それらが日本に侵入すると、リンゴをはじめ果物が壊滅的な打撃を受けるので、これまで輸入禁止措置がとられていました。
しかし、95年1月、日本政府はアメリカの外交圧力に屈し、リンゴの輸入を解禁し、その際、農水省は告示で以下のような条件をつけました。
①園地を指定し、土壌を濃密に消毒すること。
②収穫したリンゴは、1立方メートルあたり56グラム(アメリカ)または24グラム(ニュージーランド)の臭化メチルでくん蒸すること。
③長期間低温で消毒すること(アメリカは2・2℃で55日間、ニュージーランドは0・5℃で25日間)。
このような条件を付けて、わが国のリンゴ生産者の反対を押し切って、輸入を解禁しました。

リンゴの大生産国日本へ、わざわざ太平洋を越えて競合品を売り込むため、こんな無理をしています。

サクランボも日本へ輸出する際、臭化メチルでくん蒸することが義務づけら

れています。
世界の臭化メチルの91年の使用量は約7万トンです。

位はアメリカの2万8000トン、2位は日本の9700トン、3位はイタリアの7500トンと、この3力国で65%を占めます。
じつは、臭化メチルはフロンに次ぐオゾン層破壊物質なのです。
昨年12月の国際会議で、2001年に25%削減し、2010年に全廃することが決まりましたが、アメリカは今世紀中に生産を全廃する意向で、欧州も禁止に積極的です。
検疫時の使用量がもっとも多い日本は、全廃になると農産物の輸入が困難になるとして、農水省が炭酸ガスなど他の消毒剤の開発や低温処理などを研究しています。

しかし、炭酸ガスや低温殺菌の効果はあまり期待できないようです。

残留農薬検査