これでは委員が問題だと思っても十分な論議もできません」
(伊藤康江委員)。
また、合同部会での34農薬もの残留基準の審議は、「厚生省の諮問案が説明される会議と、答申の内容を決定される会議」のわずか2回で、「2回目の会議は1時間20分で終わりました」(伊藤委員)、というような、ただ決められた手続きを進めるという驚くほど形式的な審議内容です。
それでも残留農薬基準の「答申案」ができあがります。
基準作りは「動物実験からじっくりやるのが理想だが、時間もお金もかかる。
現実的にみて不可能」(厚生省)なので、独自の基準作りはおこなわず、非常にゆるい国際基準やアメリカなどの基準値をそのまま日本の残留基準としたものになっています。
厚生省はこの合同部会でまとめた答申案を「透明性の確保」の名目で、まず「FSG会議」を開催して説明し、意見を聞きます。
FSG(フードセイフティーグループ)は、聞きなれない会議ですが、在京の大使館および欧州連合(EU)代表部に対して、残留農薬基準案の内容を説明する会議で、85年に中曽根内閣が決定した「基準、認証、輸入プロセスに関わるアクションプログラム」に基づいて開催されるものです。
わが国の食品安全基準を決めるのに、外国にお伺いをたてるといういわば「治外法権的」な手続きといってよいものでしょう。